汗かき、べそかき、自転車漕ぎ、

自転車旅で感じたこと、ぼやきその他いろいろ

歳の数だけ東欧・南欧諸国1万キロ自転車旅第4走:3枚曇りガラスの車窓から

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シベリア鉄道での生活2日目の朝を迎えた。

 

朝起きたらローシャの姿はなかった。昨日夜の停車駅で話していた時にあと二駅先に家がありそこで降りると言っていた。癖っ毛が寝ている間深夜に下車してしまったのだろう。ちゃんとお別れがしたかった。すごく寂しい朝だった。昨日途中乗ってきた賑やかな子供たちも朝にはいなかった。この日の朝の車内、レールを走りガタンゴトンと揺れる音だけが静かに響いていた。

 

前の日は夜中に寝て午前9時程に起きたがこの日は早朝に起きた。窓の外を見ると湖や川が完全にではないが凍っていた。10月だが朝方など冷える時はもう凍る時期なのか。ちらほら雪があるところもある。この時期でこの状態でこの先自転車大丈夫かなあ、なんてぼーっと眺めていた。

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途中Amazar駅ではこのように水を補給している様子を見た。寒い中若い女性が重そうなフタを開け、管を移動させ補給していた。恐らく飲料用の水ではなくトイレの洗面所の水だが、おかげで水不足に困ることなくいつでも食器を洗ったり、洗いたい時に顔を洗ったりできる。昨日少し水の勢いが弱いかなあと感じたことはあったが、こうやって定期的に駅で補充しているおかげで無くなることはなく使えているみたいだ。

 

あと基本的にインターネットや電波に関して、もちろんキャリアによる違いはあるだろうが駅の前後くらいでしか繋がらない。そんなでブログを更新するのもちょいと一苦労だ。まずオフラインで記事を下書きする。次に駅で電波がつながると画像をアップロードする。アップロード速度も3G回線で速くはないので停車時間が短かったりして、一度に全部貼れないと次の駅までお預け。そしてなんとか全部下書きと画像を終えたら、改めて全体を確認して次の駅でやっと更新できる。と、そんなことはどうでもいいのだ。その電波事情のため少し長く停まる駅に着くと皆家族や恋人だろうか電話をかけ始める。その光景が好きだ。もうすぐ着くよ、愛しているよ、なんて言っているのだろう。

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もう1つ印象的な光景がありました。Amazar駅は20分程止まっていて多く乗客が降りる。駅に着くとホームにはピロシキやらを売る即興の露店がちらほらありました。しばらくして発車時刻がせまり車掌さんが声をかけ乗客が戻ります。すると露店のおばちゃん達は片付けを始めました。電車が発車するときには重そうなカートを押して街へすたすたと戻っていきました。その背中がとても印象的でした。その背中はとても切なく見えました。1日に何本この駅に停まるのでしょうか。これが主な生計なのかなあ、なんてお節介ですがそんな余計なことを考えておりました。この駅では外に出ず中から眺めているだけだったので、なにか買えばよかったなあ、なんて。

 

この町やおばちゃん達もそうですが、シベリア鉄道に乗っているといくつもの小さな村や町を通り過ぎます。古びたトタン屋根の家屋。暗闇の中の小さな電球の明かり。彼らはどんな生活をしているのだろう。大変気になりました。牛や羊なんかがいる地域もありましたが、それらもなく野菜も採れるんだろうかというところもありました。なにを食べ、どんなことを考えて生きているのか。シベリア鉄道途中下車の旅なんて面白そうだなあ。もちろんホテルなんてのもないので、かなり高度な語学力と交渉力が必要だろうなあ。

 

そんなことを考えながらぼーっと窓の外を見ていると1人の女性が話しかけてきた。

”Are you a Chinese?”

僕はごめんね、日本人なんだと答えた。そこからどこへ行くのとか軽く挨拶代わりに話していた。自然に英語を話していたけど、ロシアに来てから英語を話せる貴重な存在が現れた。もちろん質問からもわかるように彼女は中国人女性でロシア人ではない。でも久々におしゃべりできる人が現れて嬉しかった。

 

彼女の招待を受けて自分の席を離れて、彼女の4人席へお邪魔した。そこにはロシア人男性で英語と中国語を話せる人がいた。彼は中国に4年間留学していたそうで本当に流暢だ。その女性とも中国語で会話をしている。

彼が彼女に”奥にアジア人がいるぞ。”と教えたみたいでそれを聞いた彼女が癖っ毛に話しかけてきた。残念ながら中国人ではなかったが、アジア人という推測はお見事だ。

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この男性はイチョムさん、来週で27歳。女性はLiu Tingさん(英名はAgatha:エグザ)で来月26歳になるそうだ。お互いにお菓子を交換しながら談笑をしていた。アレックスさんからもらったチョコを差し出す。大した話はしていない。お互い旅の予定とか気になることを質問しあいながらの雑談。

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癖っ毛の気になっていた質問をイチョムさんにぶつけてみた。

”みんなウォッカは飲まないの?”

シベリア鉄道の光景として、ウォッカを飲むロシア人を想像していた。聞く話だったりどこかのブログでも見たような。でも今は食堂車以外では禁酒なのか飲む姿は見ない。食堂車のメニューにはアルコール類があった。三等車が禁酒なのだろうか。定かではない。イチョムさんは笑ってみんながそういう訳ではないよ、と。同じ質問を癖っ毛がする前にエグザさんもしていたみたいで、どこでもみんな同じ質問をするだよねと笑っていた。缶ビールを持って車内を歩く人は数名見ましたが周りに飲んでいるような人はおりません。酒豪ロシアを見ることはシベリア鉄道内ではなさそうです。少し一緒にウォッカをふっかけたいなあと楽しみにしていたので残念です。

 

エグザさんは写真が好きなようで撮った写真を見せながら旅の話をしてくれました。今回はお仕事のお休みを取ってロシアへ10日間ほど1人旅行。ウラジオストクでは2泊したようで癖っ毛がばたばた乗車手続きやらしている間にのんびり観光していたようです。癖っ毛が見たウラジオストクの街は日が沈んだ後でした。彼女の写真を見て昼の街の風景や人々など素敵なものばかりで、悔しさと共にまたゆっくり行きたいなあと。中国からもシベリア鉄道路線はあるのでなぜそちらを使わないのか聞いてみたら、中国の映画でウラジオストクが舞台だかワンシーンで出てきただかで来てみたかったのでこっちから乗っているそう。その映画に出てきたという灯台も実際に足を運んだよう、素敵でした。うらやましいなあ。

 

この日の夕飯も車内販売のピロシキで済ませた。初日から気になってはいたけどパンやヌードルも既に買っていたのでいつもスルーしていた。毎回言葉はわからないが買わないかって誘ってきて断るのが苦しかった。この日は買ってみることにした。味のことを聞かれたがわからないので、ジェスチャーで違う種類をなんとか購入した。実際とブログの更新には時間的なギャップがあって今のところ基本的に夜はピロシキで済ませている。でも飽きることはない。ウィンナーや茸にジャガイモなどいくつか種類もあるので自分なりにピロシキ生活を楽しんでいる。

先日停車駅で購入したときと同様2つで100ルーブルだったので大きさからも安くはない。お釣りもあったみたいだがチップね、という感じでおばちゃんの懐に入った。日本でもインドネシアでもチップ文化圏には行ったことないので新鮮な感覚だ。昨日のとは異なり食堂車で作っているためまだ温かくてもちもち。勝手におばちゃんたちの愛情を感じながらおいしくいただいた。

 

そのあともイチョムさんとエグザさんと談笑を楽しんだ。消灯の時間になっておやすみという形でそれぞれの寝床に戻った。2人とも明日の深夜イルクーツクで降りてしまうそう。イチョムさんはイルクーツクに住んでいる。エグザさんは今回の旅のメインが世界遺産バイカル湖観光でそのためにイルクーツクで降りてしまう。シベリア鉄道旅行においてイルクーツクで途中下車してバイカル湖っていうのは割とメインコースなのだけど、今回は自転車の大荷物があるために断念した。せっかくおしゃべりできる人ができたのに寂しいものです。残りの時間を楽しもう。

 

あと2日間乗ってみて感じたこととしては写真や動画がうまく撮れない問題です。

世界の車窓からの映像を浮かべる人も多いと思いますがやはりあれはテレビ番組で金銭的な面でもこちらが払っていくらか協力を得ているのでしょう。とりあえず癖っ毛のいる三等では防寒のためか窓ガラスは3枚です。また綺麗とは言えません。手前の窓は仮に自分で拭いたとしたも真ん中や外は限界があります。そのため写真や動画を撮ろうと試みても反射したり、なんとなく曇った感じで共有するに値するほどのものは撮れません。窓も開けられるわけではありません。窓の開閉に関しては二等、一等に関してはわからないので明言は避けますが三等は少なからず開けることができませんので世界の車窓からのような映像は無理そうです。写真としてはたいしたことないけど、せっかくの思い出にこのままフォルダに残そうか悩んでおります。

ウラジオストクからモスクワまで約9500kmを7泊8日で単純計算で1日に約1000km強と四国1周分を走っています。走行速度もそこそこあり、その分揺れもあります。写真や動画も振れのためにうまくピントが合わなかったりなかなか上手くいきません。

カメラ好きですしぜひこの絶景を納めてどや顔で共有したいのにできないこのもどかしさに苦しめられております。

大変素敵な光景なのです。朝方水温と気温の温度差で発生する川霧。朝焼けや夕焼けで赤く染まる白樺。また地域によってはまだ本格的ではないですが霜や雪など雪化粧した木々も見られます。一面の青空と大平原。夕暮れ時には気温差のためか、低い霧が大地を覆います。地平線の向こうから大きな太陽が顔を出してきて、小さな村々を照らす朝の光景も圧巻でした。寝る時ふと窓の外を見上げたら満点の星空。もちろん曇りの日もあるので毎日毎時これらの光景を拝める訳ではありません。

確かに目の前に素晴らしい景色が広がっているのにこの共有できない辛さ。大変無責任ですが実際に乗って見てくださいとしか言えない状況です。大変申し訳ございません。

また癖っ毛の乗っている6号車は全車両の真ん中であり、世界の車窓からの映像で有名なカーブ時もあまり迫力がありません。またなぜだかカーブのときは決まって貨物車とすれ違うことも多いです…。お、カーブ来る来ると胸を躍らせて窓に食いつくと途端に大きな貨物車が轟音と共に目の前を遮ります…。

 

いやあぜひ皆さんにも本当に体験してほしいなあ、なんてぼやいて気持ち程度に日の出の写真を貼って今回の記事を終わります。

 

お読みいただきありがとうございました。

ではでは失礼いたします。

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